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Euclidea 3.2 角と垂心を通る三角形の作図 解説

作図クイズアプリ、Euclidea。

シンプルな作りながら、最小手数での作図が案外難しくて癖になりますね。

今回はGammaの3.2 角と垂心を通る三角形(Triangle by Angle and Orthocenter)の3L6Eについて、作図の解説と数学的考察をしていきます。

自力で解きたい方は回れ右。

どうでもいいですが、角と垂心を通る三角形、ってなんだか言い回しが微妙ですよね。垂心を三角形の辺が通っているように聞こえてしまう……。

 

・3L

まずは3Lから。3Lの作図はほとんど自明です。

要するに、一つの頂点と2辺と垂心が与えられているわけですから、垂心を通るような垂線を2本引けば、三角形の残り2頂点が決まってしまいます。

 

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あとは、出てきた2頂点を直線で結ぶだけ。3Lの方はかんたんですね。

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・6E

さてさて、難しいのは6Eの作図ではないでしょうか?

上記の3Lの作図では、どうしても7Eになり1手余分にかかってしまいますね。

ただひとつ考えられるのは、垂線の作図には必ず円を用いますよね?

今2頂点を出すために個別に垂線の作図を行っているので、3手×2で6手かかっていますが、うまく垂線の作図に必要な円を共有することで、1手減らせるのではないでしょうか……?

というわけで以下の手順で作図できてしまいます。

 

 まず与えられた1頂点を中心に、垂心を通る円を作図します。

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続いて、2辺と円の交点を中心とし、垂心を通る円を2個作図します。(ここまでで3E)

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 さて、ここで、EとH、HとDを結ぶと、なんとそれぞれの線分は、予め与えられていた辺と直交します!つまり、この直線EH、HDと2辺の交点が求めたい三角形の残り2頂点になるのです。

よって、求まった交点を直線で結べば三角形の作図ができてしまいます。めでたしめでたし。

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作図は以上です。

【おまけの解説】

なぜ上記の手順で作図ができるのか、以下では数学的な解説を記載しておきます。

気になる方はぜひお読みください。

 

 

・上記の作図の手順はもう少し一般的に拡張できる

 

実は、予め与えられていた点が垂心であることは、あまり重要ではありません。垂心でなくても、三角形内の任意の点が与えられれば、その点を通って各辺に垂直な直線は、上記の手順で作図できます。

もっと言ってしまえば、2~3手目に作図した円も、中心が辺上にあれば、別に1手目に作図した円と辺の交点である必要すらありません。(参考図を以下に示します。予め与えられていた垂心ではない点に対しても、また2~3手目の円の中心をずらしても同じ作図ができていることがわかりますね)

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 今回、垂心を通るような垂線を作図できれば、垂心が持つ性質から残り2頂点が決まるため垂心を通る円を引きましたが、実は上記の手順で垂線が引けるという性質はもうちょっと一般的に成り立つのでした。

 

・上記の作図で垂線が作図できることの証明

 

 

説明のため、以下のように点に名前をつけます。

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この上の図において、∠ACB=∠AHC=90°、∠AEH=∠AED=90°を示していきます。

とはいえどちらも全く同様の証明ですので、ここでは ∠ACB=∠AHC=90°の証明のみに留めます。

まず⊿ABO'と⊿AHO'が合同であることを示します。

これはほぼ明らかですね。AB=AH、O'B=O'H(同じ円の半径)、AO'は共通ですから、3辺相等より⊿ABO'≡⊿AHO'です。よって対応する角の大きさが等しいので∠BAO'=∠HAO'となります。

次に、⊿ABCと⊿AHCが合同であることを示しましょう。

これはAB=AH(同じ円の半径)、∠BAO'=∠HAO'(上の証明の結果から)、ACは共通。よって⊿ABC≡⊿AHCとなります。

したがって∠ACB=∠ACHですが、BCHは今一直線上にありますから∠ACB+∠ACH=180°なので、∠ACB=∠ACH=90°です。

つまり、AO'とBHは直交します。

 

これでこの作図の正しさも担保されました。