Euclidea 3.6 台形の底辺の中点の作図 解説
作図クイズアプリ、Euclidea。
シンプルな作りながら、最小手数での作図が案外難しくて癖になりますね。
今回はGammaの3.6 台形の底辺の中点(Midpoints of Trapezoid Bases)の3L5Eについて、作図の解説と数学的考察をしていきます。
自力で解きたい方は回れ右。
・3L
まずは3Lから。3Lの作図は直感的に作図できる部類だと思います。
要するに台形の平行な2辺を2等分する直線を引きたいわけですから、普通に考えれば、2辺の中点を求めて、それを結べばいいという発想になるはず。
この発想に基づけば、平行な2辺それぞれの垂直二等分線を作図し、それを結ぶという流れになるでしょう。これで3 Lineで作図完了です。
・5E
さてさて、みなさんが頭を悩ませているのは、こちらの5Eの作図ではないかと思います。
垂直2等分線を作図したりしていると、あっという間に7Eになってしまい、5Eはかなり遠くなります……。
まずは答えから示します。
まず、台形の2本の対角線を引きます。この交点は、実は台形の底辺の2等分線が通る点でもあります。(ここまで2E)
続いて、台形の平行でない2辺を延長し、その交点を出します。(ここまで4E)
そして実はこの点も、求める直線が通る点になります。よって、今求めた2つの交点を結ぶことにより、台形の2底辺の2等分線を作図することができます。
作図は以上です。
【おまけの解説】
なぜ上記の手順で作図ができるのか、以下では数学的な解説を記載しておきます。
気になる方はぜひお読みください。
・2本の対角線の交点を、底辺の2等分線が通ること
台形の頂点や、対角線の交点などに以下のように名前をつけます。
ABCDは台形の各頂点。E,Fはそれぞれ、AB、CDの中点。またHは対角線の交点、H’は対角線BDと二等分線EFの交点です。
このときに2本の対角線の交点を底辺の2等分線が通ることは、2本の対角線の交点Hと、対角線の1本と台形の底辺の2等分線の交点H'が一致することを示せば証明することができます。
まず上の図で
⊿ABHと⊿CDHは平行線の錯角が等しいことにより、2つの角がそれぞれ等しく、相似です。
よって対応する辺の比が等しいので、
BH:HD=AB:CD …①がいえます。
次に下の図で
⊿BEH’と⊿DFH’についても、上同様に2つの角がそれぞれ等しく相似です。
よって対応する辺の比が等しくなるので、
BH’:H’D=EB:DF …②がいえます。
ここで点Eと点Fがそれぞれ、ABとCDの二等分点であることに注意すれば、
AB:CD=EB:DFですよね。
よってこのことと、①②を合わせると、
BH:HD=AB:CD=EB:DF=BH’:H’D
となります。これはBD上に存在するHとH'が全く同じ位置にあるということを示していますから、H=H'です。
つまり2本の対角線の交点と、1本の対角線と底辺の2等分線の交点が一致するわけですから、底辺の2等分線は台形の対角線の交点を通ることになります。
・台形の脚を延長した交点を、底辺の2等分線が通ること
台形の脚
台形の脚とは、台形の平行でない1組の辺のことをいいます。
「台形の脚を延長した交点を、底辺の2等分線が通ること」については、台形の脚の交点と上底の中点を通る直線が、下底も2等分することを示すことで証明していきます。
つまり、ABCDは台形の各頂点であり、ADとCBの交点をGとし、辺ABの中点をEとすると、直線EGは辺CDを2等分する(CDの中点を通る)ことを証明したいわけです。
これは中学校で学習する、平行線と辺の比の知識で証明できます。
AB∥CDが重要です。
AB∥CDより、GB:BE=GC:CF。
よってCF=BE×GC/GB…①です。
同様に、DF=AE×GD/GA…②となります。
また、GB:GC=GA:GD …③です。
ここで③からGC/GB=GD/GA…④がいえます。
また点EはABの中点でしたから、AE=BE…⑤。
④と⑤に注意して①と②を見てみると……①と②の右辺は全く等しくなることがわかります!
つまりCF=DFなんです。よって、点FはCDの中点であることがわかりました。
つまり、台形の脚の交点と上底の中点を通る直線は、下底を2等分する。言い換えれば、台形の底辺の2等分線は、台形の脚の交点を通るのです。
ここまでの2つの証明により、台形の底辺の2等分線は、台形の対角線の交点と台形の脚の交点を通ることがわかりました。よって、上で示したような5Eの作図の手順が成立します。
少し長くなりましたが、以上です。